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2004年 05月 07日 ( 1 )


2004年 05月 07日

銭湯おそるべし

世田谷区・経堂エリアで「癒し」と「笑い」を同時に体験したいと思ったら、
迷うことなく銭湯に直行して欲しい。
ここ数年、農大通りを少し入った上総湯や下高井戸の開楽湯など、幾つもの
湯が、時代の流れで悲しくも廃業してしまったけど、すずらん通りには、
ラドン温泉の塩原湯、下高井戸の松原高校脇には自前の温泉が人気の月見湯、
まだまだ地元の商店主や学生で賑わう銭湯が健在。
そして、これらの銭湯は、知られざる笑いの殿堂なのだった。

昨日、遭遇したのは、70代半ばとおぼしい男性2人と50代くらいの男性
1人の2対1のトークバトルだった。場所は、脱衣所。
50代の男性(以下、彼を中年Aとします)は、なにかにつけて若さと経済力を誇示して、他の二人(以下、老年B&Cとします)を圧倒していた。
中年Aは、なんだか大人げのない勝ち気な性格のようで、「海外旅行に行った」とか「フランスのワインを飲んだ」とか、「どうだ?」と言う自慢モードは、
傍目に見ていても激しいものがあった。おそらく年金暮らしの老年B&Cは、
なんだかオモシロクないようだった。まあ、考えれば、無理もない、中年Aは、下手したら息子のような年の若僧なのだ。彼らにすれば。
脱衣所で涼んだり着替えたりしている人の中には、その一方的なコトバの老人
虐待に気付いて、中年Aを嫌な目で見る人もいた。
しかし、形勢は意外なカタチで逆転された。
それは、老年Bが、自らの病の話をしはじめた時だった。
老年B「話は変わりますが、先日、医者で前立腺肥大が気になると言われ
    ましてね‥‥」
老年C「わたしなんか、この7、8年クスリ飲んでますよ」
老年B「おたくも?」
老年C「なんでも聞いてください。本もいっぱい持ってます」
老年B「ほう。じゃ先輩だ!」
と、まるで戦友のように盛り上がる二人がイニシアティブを取るのに猛然と
反発するように、中年Aが、子供のように割って入った。
中年A「ぼくも、この間、胆石とったんですよ」
が、老年B&Cのタッグは、微動だにしない鉄壁だった。
老年C「胆石?ほう‥‥あのレーザーで散らして治るやつですな」
老年B「切らずに治る病気は病気じゃない‥‥‥」
老年C「昔は、ビールを飲んでションベンと一緒にカランと金隠しに転がして
   出したもんです」
老年B「あれは病気のうちに入りませんな」
中年A「‥‥‥‥」
漫画なら「ギャフン!」という台詞を口から伸ばした吹き出しに書き込みたい
くらい不意をつかれた唖然顔をした中年Aだったが、よせばいいのに、どういうわけなのか、また勝負を仕掛けた。
中年A「でも、ぼくも言われました。病院で。前立腺肥大は気をつけろって」
老年C「前立線の肥大はね。男なら50を越えれば誰でもそうなのよ。
   わたしなんか、クスリを飲めと言われるようになる前でも、かなり
   大きくなってましたからな。60を過ぎた頃には、こうやって立って
   オシッコしてるでしょ。勢いよく出てる時でも、ゆくっり膝を曲げて
   しゃがむとだね。なぜかオシッコが止まるんです!」
中年A「はっ?」
老年C「なぜかわかりますかな?」
中年A「いえ‥‥‥」
老年B「ああっ‥‥前立腺が圧迫されてるんですな!」
老年C「その通り!さすが!」
いまや老年B&Cは、勝ち誇った目で中年Aを眺めている。しかし、中年Aは、
まだ自分の負けを認めたくなかったらしい。
中年A「知り合いに前立腺の手術をした人がいます‥‥」
が、ここから老年コンビは、畳み掛けるようなラッシュを見せた。
老年B「前立腺の手術?そんなもの取ってしまえば終わりでしょう!
   わたしの昔の同僚には、前立腺肥大から前立腺癌になって、それが、
   膀胱に転移して、もうほんとそっくり取っちゃった人がいる。
   膀胱がないんですからなぁ。オシッコなんか、腎臓から直接ビニールの
   管を通して出てくるんですよ。これが。」
老年C「ほう〜!」
中年A「‥‥‥‥」
ノックアウト。中年Aの状態を語るのに、これ以上ふさわしい言葉はなかった。
その一部始終が気になっていたぼくを含めた数名は、みんな、ご贔屓のプロ
野球チームがサヨナラ逆転満塁ホームランで勝ったような爽やかな表情をして
いた。この健康ブームのご時勢なのに、世間の価値観が通じない。
まさに「笑いのユートピア」がそこにあると、思わざるをえなかった。
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by yasunari_suda | 2004-05-07 05:03 | コミュニティ論