2004年 04月 30日
人生の豊かさの尺度は、笑いに恵まれているかどうかだと思っている。 現在は、たまたま、どういうわけなのか、お金を持っていることが何にも増して良いことだとされる資本主義の世の中。だけど、人類の歴史を考えてみると、 資本主義なんて、たかだか西ヨーロッパの片隅に数百年ほど前に発生した伝染病 のようなものだと思う。 「利益を追求することこそ善」という考えは、実は、社会の笑いを貧弱にする。 なぜか?それは、単一の価値観に覆われた社会は、多様性を失うからだ。 多様性のある社会。それこそが、笑いの温床となる。 それは、様々な生命を育むマングローブの自然林のようなものだ。 しかし、せっかくのマングローブの自然林も、資本の論理によって開発されて、たとえば「エビの養殖場」に姿を変えられてしまったら、もう何も起こらない。 同じことが、たとえば、私鉄沿線の街・経堂でも起きる。 いまから17年ほど前、ぼくは経堂の南側に住んでいた。 バブルのピークを迎える少し前。当時の農大通りは、まだ多様性のある商店街 だった。坂を降りる途中の右手に魚屋さんがあって、威勢のいい大将が地元の 奥さんとライブ感あふれる駆け引きを演じる。その他にも店主の個性が前に出る個人商店が軒を連ねていた。若い人には必ず、唐揚げやコロッケをおまけしてくれる惣菜屋さん、ごく少量でも嫌がらずに量り売りしてくれるお茶屋さんなど、 まあ癖のある頑固オヤジもいたにはいたが、商店街は、単に必要なモノを手に入れる場所というだけではなく、生身の人間の生身の感情と触れあえる多様性のある劇場だった。ところが、いまは、驚くほど大手資本系のチェーン店が増えてしまい、当時の賑わいとは程遠い。 多様性のあった商店街が、より高度な資本の論理の洗礼を受けて、マングローブの自然林から半ばエビの養殖場に姿を変えてしまったのだ。 しかし、同時に興味深いのは、どんなに絶望的な状況にあっても人は「例外」を作り出すという事実だ。 たとえば、広島焼きの「八昌」。本場・広島の名店で7年間修行したオーナーの 坂本さんが、23歳の若さで、3年前にオープンした人気店だ。 しかも彼は茨城出身、奥さんは鳥取出身で、経堂に縁故があったわけじゃない。 それが今や、地元の社交場的な雰囲気が濃厚な賑わい店になっている。 店内を勢い良く飛び交う数々のコトバは、豊かな笑いの森を形成していて、 「ここは単なる資本主義の世界ではない」と感じさせてくれるのだ。 実は、経堂には、このような「例外」が少なくない。 ちょっと小難しい書き出しになったけど、経堂と地域コミュニティの笑いに ついて書いていきます。 果たして「エビの養殖場」を「マングローブの林」に変えることは可能なので しょうか?
by yasunari_suda
| 2004-04-30 05:14
| コミュニティ論
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